恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
…私…昨日、高守さんが帰った後、鍵をしなかったかな。…そうだ、そのままだった。
では、この足音、気配は、高守さん?そうに違いない。
どうしよう。一度もメールを返さなかったから、心配して来たのだろうか。
でも、高守さんなら声を掛けるんじゃない?…じゃあ、この足音は誰?誰だろう。もしかして、のんびりしてたら危ない奴?
あ、でも…。まだ、そうと決まった訳ではない。
ドアの前で止まったような気がする。…どうしよう。明かりは点けていない。今点けるのも逆に恐い。
声を掛けてみようか。黙っていた方がいい?空き巣なら顔も見てないから人が居たって解ったら静かに退散するかも。
あっ。ノブが…動いたような音がした。ドアが開いた…入ってくる。
「た、高守さん?…ですか?」
どうせ、居ると解ったら空き巣だったとしても、もう逃げられない。被っていた布団をずらし呼んでみた。
「どうして…」
…違う。違う、高守さんの声じゃない。もっと…若い。誰?……で、も。知ってる。
「どうして…高守って」
「ぇえ?」
「俺…。俺です」
聞いた事がある…知ってる声…。
手を伸ばしてサイドテーブルの上の小さい明かりを手探りでタッチした。はっきり見えていなくても、居る方から視線は外せなかった。
ドアの前に立っていた姿が浮かび上がった。
「…あ、貴方…」
パクパクしてやっと声を出した。同時に起き上がった。
「ど、どうしてここに。え、なんで、どうしたの?えー、何、何?私、た、倒れてないわよ?何、何?」
完全にパニックだ。
「フ。…倒れてない、か…。あー、許可なく入ってすみません。…開いてたので。って言っても駄目ですよね」
「あの、ね…。よく意味が解らないんだけど。落ち着いて聞いてるのも変だけど、どうしたの?」
え?ベッドに腰掛けられた。
「解りませんか?」
「う、ん。え?何?私、なんか、鈍い?」
「フ。ハハ、う゛~ん。はい」
仄明るい中で、顔がよく見えた。
「え?」
何が解ってないの?どういう事なの?
「んー、来たには来たんですけど…ふぅ……何から話しましょうか…」