恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
「昨日、ラウンジで会った時、変だったから」
「え?変って言ったら、貴方も変だった。いつもとちょっと違ったし」
余所余所しいっていうの?そんな感じだったじゃない。
「どこがですか?恰好?」
「それは会う為の服装だっただろうから、何とも…」
「じゃあ、何が変?」
「いつも会った時、…別れる時、じゃあ、またって言うのに。昨日はそうじゃなかった。…さようならって言ったから…」
…。
「昨日は、もう、さようならだと思ったからです」
「え?どういう事?どこか遠くに行っちゃうの?」
「…フ。いいえ?」
「え、じゃあ、何故?」
「…元々、名前も連絡先も知らない俺の事ですよ?会う約束だってした事なんてない。ただ偶然会ってるだけです」
「うん。それは確かにそうだけど」
そうよ?
「普通じゃないですか、別れの挨拶、さようならって」
「そうだけど。でも」
「俺と会って、楽しかったですか?」
「え?」
「また…、会えたらいいなって思いましたか?」
そんな事、急に聞かれても…。
「…解らない。だって…、考えてみた事ないから。でも…言われてみたら、いつも楽しかった気がする。話が尽きない感じ?あ、私だけ?迷惑だった?」
…あ。私が勝手に…思っただけかな。
「フ。いいえ…そうですか」
え?な、に?何よ。
「え、あ、それで、どうして、もう、さよならって」
「それは、…もう、人のモノになってしまう手前なのかなって、思ったからです」
「え?な、に?貴方…何、何を知ってるの?だからって、え、どうして?」
「さっき、俺の事、タカモリって呼びました。それはどうして?」
「それは、その人だと思ったから。その人だと思ったっていうより、誰か解らなかったから呼んでみたの、…恐かったから。だってそうでしょ?鍵を掛けてなかった私が不用心なんだけど、人が入って来たのよ?」
「あー、それは俺が悪いんです。すみませんでした。…その人は勝手に入るんですね…。そういう人」
「あ、え、それはちょっと違うけど。それで、何?何を知ってるの?私、貴方に話を聞いてもらったけど、具体的に名前を出して話した覚えはないんだけど。貴方は高守さんを知ってるの?」
「俺は、高守です」
「え?」
「貴女が色々と面倒をみてくれた、強盗に遭って怪我をした男の息子です」