恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
部屋の明かりを点けようと思った。
「ちょっと、移動してもらっていい?」
「はい?あー、はい」
ベッドから腰を上げた。
「あっちの部屋に移動しようか。ずっとここではなんだし」
布団を捲り、出ようと思った。…あ…ぁ。お腹が空いていたんだった。しかも横になりっ放し…足をついて立ち上がったらふらついた。情けない…。
「あ、おっと…、具合が悪くて休んでいたんですか?大丈夫?」
「…う、ん。ちょっと風邪気味だった。最初は仮病もかなり混ざってた…。はぁ…でも今のは…空腹ー。ごめん、本当…こんな目にばっかり遭わせて…」
「はあ?ハハ。ここまで度々あると、わざとじゃないんですかって言ってしまいそうだ。ハハハ。"ふて寝"からの風邪…。でずっと寝っ放し?だから倒れそうになったんですね。もう…いつから食べてないんです?」
「…昨夜からよ」「昨夜からだな」
「…え?」
「…親父」「高、守さん…」
いつの間にか高守さんが居た。音もしなかった。気配だって…チャイムだって…。薄暗いし全然気がつかなかった。
話に夢中だったから…?
「はぁ…。だから嫌だったんだよ…。俊佑、何もしてないだろうな。…離れろ…代わる」
どうなってるの?これって、どういう状況なの…?
ふらついて抱えてくれていた腕が、突然現れた高守さんに代わった。
大きな二人が立って居ると、部屋が急に狭い…。
「後は俺が世話する。帰れ。梨央は俺がつき合ってる人だ」
…今、高守さん…、俺って言った。表情だってきつい。…こんな高守さんを見るのは初めてだ。
「はあぁ…。解ったよ。帰る。だけど、まだ解らないからな?…梨央さん、話が中途半端になったけど、まだ話はあるんだ。だから、また」
「いいから、帰れ…。こんな風に来たら今度は許さないからな、いいな?」
「梨央さんはまだ親父のもんじゃないんだ。自由だ」
…何、こ、れ。
部屋を出てゴトゴトと靴を履き出て行ったようだ。帰っていく姿を見させないようにするみたいに、私は高守さんの胸に顔を押しつけられるようにされ、腕を回されていた。
「…はぁ、さて…。梨央、鍵はしてなかったのかな?それとも、アイツだと知って開けたのかな?だとしたら…どうして寝室なんだ?」
話し掛けられ、緩められた腕の中で顔を上げた。
「私、どうやら昨夜から開けてたみたいです」
「あ、じゃあ、アイツが勝手に入ったんだな。はぁ…もう、アイツに限らず危ないじゃないか…。何から叱ったらいいのやら…。とにかく、ご飯を買って来たから食べようか、ん?大丈夫なんだな?」
「…はい」
有り難うございます。とても気の利いた事をして頂いて…。流石です。
「よし。アイツに何もされなかった?」
「え?はい。何も…」
抱しめられた。
「はぁ、解ってるだろうけど、アイツは君のことが好きみたいだ。だから…私の好きな人だと、きちんと会わせておきたかったんだ…」
…そうなんだ。…思ってもみなかった。言われて急にドキドキする…意識するまでは平気だった気がする。
「…梨央」
上向かされて探るように顔を見られた。
「…ドキドキし始めた…揺れてる?アイツにか?…どっち?……アイツを意識しては駄目だ…梨央…」
あ。ん…。唇が触れた。