恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
「こうしてると、自然に楽しいです。俺、梨央さんと会った時、いつの間にかウキウキしてます。もう、後半はばれてたかな」
…確かに楽しく過ごしてた。だけど、申し訳ない、そんな事は…全く気がつかなかった。
「梨央さんは、人を好きになる事をしないようにしようとする理由があるんですか?何か…辛い過去でもあるんですか?」
「そんなモノは無い、かな。それは私も思ってる最中っていうか。…好意を持ってくれてる人に、何故素直に応えられないんだろうって」
「…うん、知ってます。…好きって思ってるなら、多分、徐々に好きになっていきますよ。そういうモノでしょ?凄く…親父の事だから聞き辛いんだけど、好きは好きなんでしょ?」
「うん、好きだと思う」
「どこが?親父のどこがいいですか?オヤジですよ?」
…そりゃあ貴方の若さと比べたらオヤジでしょ?実際、お父さんなんだから。
「じゃあ、質問を変えます。俺ってどう思います?生意気で、知ったかぶりの年下男だとか。何でもいいです」
「貴方は…」
「あ、俺、俊佑です」
知ってるよ?ちょっと待ってね、今言うから。
「…俊佑君は、第一に優しいのかな…。困ってる人を放っておけない。私、何度もお世話になってるから実証済みね。それから…、本人の言う通りなら、気が弱いのかなぁ。極力、人と関わりたくないみたいだから。それから、言うべき事は言っておきたいって言ったから、気が弱いって事でもないのかな。あ、これって矛盾してる?臨機応変て、言えばいいのかな?」
「…そうですか。あ、ここ、入りましょう。待ち時間あるかな…。ちょっと聞いてみます」
「うん、ありがと」
平日の晩。そこそこ待つくらいかな。
ずっと繋いでた手…、ちょっと熱くなってる。あ、出て来た。OKサインをしていた。
「タイミングいいです。待たなくてOKですって、入りましょう」
「あ、うん、ラッキーね」
そうして、二人でネタの話をしながらお寿司を堪能した。席は埋まっていたから本当にグッドタイミングだったのだろう。
思えば…来る道すがら、話の大筋は大体済んでいた。というか、好きって言われた。だから、食べながらじゃない分、食べ物が喉を通らないって事にならなかった。…不思議な人だ。前にも確か…こういう感じに助けられた。
話し辛いと思っていたのに、気分が軽くなって話せた覚えがある。
「…気遣いが出来るんだ。横柄じゃ無いし…、経営者に向いてるのかも…」
「ん?はい、新しいの握ってもらいましたよ。鯵、好きなんでしょ?」
「あ、有り難う。…美味しそう」
聞こえちゃったかな。
「もう、解ってると思いますが、日曜に会う予定って、俺の事でしたから。まあ、ドタキャン食らいましたけど」
「…え?本当?会う人ってお母さんじゃなかったの?」
てっきりお母さんに会うものだと…。はぁ。高守さんが会わせたかったのは息子…だった。
「え?俺ですよ?え、親父、言いませんでした?解ってるつもりで言わなかったのかな…」
あ、それは…。
「私が勝手に…」
「思い込んだ」
「う、ん。だから…聞いて確かめなかった」
「だから、ドタキャン」
「…うん」
はぁ、ごめん、ごめんなさい。