恋?…私次第。~好きなのは私なんです~
あ、黒い車、他に車は無かった、高守さんだと思う。
休診の眼科の前に停めた車の横で、傘を差した長身でスタイルのいいイケオジが立っていた。私の方が先に着くと思ったのに…随分早かったんだ。
名前を呼んで、少し小走りで駆け寄った。
「高守さん!…あの、ごめんなさい」
傘から顔が現れた。あ、もう、ガーゼも当てていない顔だ。良かった、治ったんだ。
「ん?どうしてごめんなさい?」
「え?…あ、何となくです…」
面と向かうと、何だか…緊張する…。
「フ。ハハハ。私が外で待っていたからかな?雨は誰のせいでもないし、私が迎えに来た事も、車の外で待っていた事も、私が勝手にした事だ。待たせてもないよ?まだ時間前だし。でしょ?だから、ごめんなさいは要らない。行きましょうか、さあ、乗って?勿論、警戒しないならだけどね」
助手席側にエスコートされた。ドアを開けられた。
警戒も何も、もうそんな事は今更だ。来ちゃったし。抵抗は不思議とない。
「…失礼します」
傘を閉じると自分の傘を差し掛けながら引き取ってくれた。乗った事を確認すると、ドアが閉められた。
向こう側に行くと、運転席の後ろのドアを開け、二本の傘を置くと乗り込んだ。
「結局こうして乗り降りすると、その都度、多少濡れてしまうけどね」
少しだけ雨のかかった肩を撫でていた。私は全くと言っていいほど濡れていない。慌ててハンカチを取り出し、横から気持ち程度にポンポンと服を叩いた。
「あぁ、有り難う、大丈夫だよ。あのね…今日行こうとしてたお店は止めにします」
「え?」
車はゆっくりとスタートした。
ではこのお迎えは?お礼のお食事って無くなったの?
「ああ、安心してください。店を替えるだけです。別に妙な場所に連れて行こうなんて思ってないからね」
「はい。…あ、違いますよ?そんな事は思ってませんから」
「フ、そう?信じてくれる?なら良かった。パスタ、食べる気持ちにさせてたのにごめんね?」
「いえ、それは大丈夫です」
確かに色々なソースを想像して、パスタの口になってましたけど。私はお礼をされる側、だからいいんです、そんな事は。何だっていいんですから。文句を言うなんて、烏滸がましい。
「お楽しみって言ってたところに行って、食べましょうか」
「え?はい、私は特に…」
異存も無いし、そこがどこかも元々知らない。
「期待させたかも知れないが、お楽しみっていうのはケーキビュッフェの事なんですよ。抹茶にチョコ、それからいちご、チーズの特集らしいです。結構豊富でしょ?ケーキは好きかなと思って。
そこは別のフロアにランチもビュッフェがありますから、そこに。最初は場所替えして楽しもうと思っていたんです。同じ建物の中ではちょっとつまらないから」
「そうだったんだ…」
「ん?」
「あ、何でもないです」
心の声が出ちゃった。
「そこだと外の移動がないから濡れないよ?」
「そうなんだ」
「ん?」
「あ、すみません。ちょいちょい心の声が…。つい呟いてしまって」