甘い匂いに立ちつくす



「発表するときのある程度の原稿と、担当者。原稿なんてどうにでも私だって作れるけど、ネタになる情報は紙にしてとっといた方がいいかもね…」



 鞄からルーズリーフを取りだし、シャープペンを出す。

 髪の毛が邪魔になったのか、今度はヘアゴムを出した。そして、髪の毛を結っていく。
 揺れる髪の束を見ていて不意に気がついた。


 シャンプーか?
 いい匂いがした。


 そして見えるうなじ。ネクタイを緩めて、窮屈な一番上あたりのボタンをはずしているワイシャツから見える首もと。

 

 ばか!
 俺は何を見てるんだよっ!


 詩織から俺は目をそらした。

 こいつも、一応女なんだよな。
 そう思いながら。



  《甘い匂いに立ちつくす》



「ちょっと、何つっ立ってるの」

「いや、別に―――」






2018/3/27
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