真昼のブルームーン
朝日を見る度に焦りと劣等感が私を襲う。
逃げる様に廊下に出て窓を開け放つ。
日光の当たらない窓側は、まだ夜の名残を微かに感じる。
ひんやりとした空気を、肺いっぱいに吸い込む。
少しさっぱりした心地で空を見上げた。
ちょうど青い月が見える位置。
安心感と虚無感。
複雑な感情に1人苦笑い。
私はホッと息を吐き、窓のレールに腕を乗せもたれかかる。
夜より遥かに地味な月を何とも無しに眺める。
朝日を見た時ほどの眩しさはカケラも無く、ほとんど快晴の空に溶け込んでいる。
あのグラウンドを駆け回る人の何人が、この青い月に気がつくだろうか。
ふと、いつかのクラスメイトの会話を思い出す。
『ヒナがサッカー部の西野に告ったんだって〜』
『マジ!ずっと片思いしてたもんね〜』
ひんやりとした空気。
じっと見ていないと見失いそうな月。

(私も恋をしたら、もう少し何か変わるのかな…)

さほど関心の無い話だったけれど、羨ましくも思った。
青い月はなぜか私を安心させる。
でも、それは同時に“このままではいけない”とも思わせた。
どれほど眺めていたか、次第に眠気が襲って来る。
一瞬、眠りかけてばっと起きる。
さっきと変わらず浮かぶ月に安心して再び目を閉じた。

「ねえ、君」
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