【BL】お前を抱きたい
俺は急いで上着を羽織り、携帯電話を上着のポケットに入れ、長財布をズボンの後ろポケットに入れた。
付けたままのテレビの電源をリモコンで遠隔操作して切り、飲みかけのビールの中に埃が入らないように、缶の口の部分にハンカチを被せた。
勢いよく家を飛び出したはいいが、何しろこんな時間だ。
午前2時を回っている。
終電はとうの昔に発車してしまったらしく、駅の電気は真っ暗だった。
「……困ったな。タクシーで行くしかないか」
俺は駅に向けていた足を逆に回転させ、近くのタクシー乗り場へと歩を進めた。
いくら深夜とはいえ、車の通りは未だに多い、そこそこの都会だったため、タクシーは案外直ぐに捕まえれた。
「狭川町までお願いします」
「判りました」
この会話は二度目だ。