【BL】お前を抱きたい
「うん。先月帰国したの。向こうの暮らしにも大分慣れたんだけど…」
彼女は語尾を濁した。
「けど…?」
彼女は俺に背を向け、言った。
「…好きな人が、日本に残っていたから。だから帰国して、この会社に勤める事にしたの」
…好きな人……
俺は此方に背を向けたままの彼女に訊ねた。
「好きな人は、この会社に勤めているのか?」
彼女は小さく頷いた。
――夕霧さんの好きな人…
夕霧さんが美少女なため、相手の人も相当な美男なんだろう。
そう考えると、心当たる人が一人居る。
「…高宮さん…とか?」
声が震えた。
彼女はどう思ったのだろうか。
彼女は顔付きを険しくした。