信じて、信じて。
「あっ、あー…えと、違うくて…皆様のことを言ったのではなくてですね!?」

「…そんなのどうでもいいんだよねぇ」

こつ、こつと靴の音をわざわざ鳴らして現れる風成-Fuusei-の幹部の1人、可愛い顔して腹黒な谷口 侑-Yuu Taniguti-。

「…どうでも、いいって?」

風成の、人を見たらなぜか。
息の仕方を、忘れてしまう。
喉で空気が突っかかって、肺にうまく入らない感覚。

「ん〜?元姫さんは馬鹿なのかな?あのね、別に暇人だって言われても言われなくても僕はキミを殴らなくちゃなの。」

なんて理不尽なことを言い出すんだこの男。意味もなく殴られるのはわけがわからない。

「紗季をボロボロにしたこと、忘れたとは言わせないよ?」

…さすが、不良。殺気の出方が半端じゃない。これは足がすくんでしまう。元々ビビリなんですけどね。

「…やった覚えがないので、忘れるも何も無いんです」

「…まだそんなこと言ってるの?」

鼻で笑われる。
やってないんだから、無実を主張するのは正しいと思うんだけど。ああ、向こうからすればやったのだから間違いなのか。
はぁぁ、と大きなため息をこらえる。

「みんな!こんな所で何してる…の…、あき、ちゃん…?」

器用なもんだねぇ。
侑の後ろから駆け寄ってきた紗季。私の姿を見ただけで、わざわざガタガタ震え始める。目を見開いて「あ…っ、やっ…ごめ、なさっ…」と言い始める。
こちらからしたらずいぶん滑稽なのだけど、紗季の事を愛してやまないこの学校の人たちからすると紗季を一刻でも早く私への恐怖心を取り除いてあげたいところだろう。何もしてないから被害妄想だけども。
紗季が出てきたことによって心臓が激しく打っていることについては、気のせいということにしておく。

「紗季ちゃんっ!!」

侑が紗季の方へ駆け寄って行っている。紗季の後ろに見えた、他の風成の幹部達。……総長と、副総長。
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