信じて、信じて。
「はいはい、私がやりました。」

お手上げ、のポーズをして自白する。やってないって言うのもめんどくさい。
…めんどくさいなんて、建前で。本音は、辛い。何度叫んでも信じてもらえない。

「…なんでそんな投げやりな感じなのぉ?」

…今出てきてくれなくていいんだよ侑くん。君は可愛いもの大好きって言いながら紗季とクマさんのぬいぐるみを抱きしめながらショートケーキでも食べててください。

「…なぁ、紗季」

「なぁに…?」

泣いてる人はそんなにすぐ返事出来ないよ、冷静になればわかるでしょ?まあみーーんなあの可愛い顔した性悪女の手のひらで転がされてるわけだから気づかないんだけど。

「お前は、あんな投げやりな感じでいいのか?」

「…ちゃんと、謝って欲しいかな…」

「そうか…」

ここで大声で叫んでやりたい。見ろ、紗季は愉快そうに口元を歪めているぞと。そんなことしたら紗季自身が気づいてみんなが振り返る前に口元を締めて私が言いがかりを言った、みたいにされるんだけど。

「と、まぁ紗季チャンはしっかりと謝って欲しいそうなので。」

風成一のチャラ男、石宮 要-Kaname Isimiya-が近づいてきて、にっこりと笑う。

「とりあえず土下座だね?」

こてん、と首を横に倒して言い放った。
…どげざ。

「誠心誠意、しっかりと謝ってもらわないと。まあ謝ってもらってもこっちは許す気ねぇけど」

やってもないことを、わざわざ頭を床につけて謝る。
………ちゃんちゃらおかしい。

「でもぉ、土下座って地位の高い人がするから価値があるわけであってさぁ。こいつがやっても意味無いね?」

「いや、気持ちを表すって意味じゃまあ大丈夫じゃね?」

「そーゆーもん?」

「そーゆーもん」

ぐっと、下唇を噛む。なんで、なんで。あなた達の後ろにいる女は今もほくそ微笑んでるのに。あなた達の事を顔でしか見てないような人なのに。なんで、盾になるように後ろに隠してるの?なんで、私の時はそんなことしてくれなかったのに。なんで。なんで。なんで。

一つ一つ、静かに何かが崩れていった。仲間なんて信じなければよかった。守ってやるなんて、信じるべきじゃなかった。
あなた達といた毎日は本当に楽しかったです。

ひとつ、心に決めてゆっくりと膝を折る。正座し、口をぱくぱくと動かす。それと同時に頭を地面につける。

「……申し訳ありませんでした」

そう言いながら、視界がぼんやりとなる。泣いちゃダメ、泣いちゃダメ。そんなことしたら仲間に戻りたいと思ってると思われる。

上の方で、あはっ♪と楽しそうに笑う声が聞こえる。
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