私達の狂った歯車
★叶夜side★

「アンタの過去、調べさせてもらったよ」
そう言いながら紙をヒラつかせると、姫莉が土下座をした。
「お願い!お願いやから!!その事、みんなには言わんといて!!」
面白い。使える。
単純にそれを見てそう思った。

「へぇ、それが人に頼み事をする時の言葉?」
「お願いします!!」
姫莉は額を床に擦り付けた。
「アッハハハハハ!」
俺は腹を抱えて笑った。
マジかよ。
コイツ凄いバカだ。
「黙ってる訳ないでしょ?俺、みんなに言うし。」

俺を見上げる姫莉の顔をみて思う。
初めて会った時から思ってんた。
「アンタ、あの人に似てるんだ。」
改めて姫莉の顔を見る。
「・・・え?」
「その杏色の瞳と髪。あとその声も、あの人にそっくりなんだ」
髪型違うし性格も違う。
だけど、そっくり。
「あの人・・・?」
「中等部まで一緒で、みんなが大好きだったんだ。明るくて可愛いあの子の事が。」
何で、どうしてコイツなんかに昔の話を・・・?

「・・・今は、どうしとんの?その人。」
だから嫌いなんだ。
ド直球で。無神経で。
人の気も知らずに、何でも聞いてきて・・・。
しかも今回は・・・。
忘れようとしていた過去の事を・・・。
あの人のことも・・・。

忘れようとして勉強を沢山してきた。
女遊びも始めた。
でも、金目当ての女なんて吐き気がする。
手を繋ぐのも抵抗がある。
頑張って忘れようとした。
だけど、忘れなかった。
コイツのせいで。

麻生姫莉のせいで。

「あの人は・・・。マリアは死んだ。」
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