私達の狂った歯車
『0点』
沈黙を破ったのは青色の彼やった。
うちを見ずに、青色の彼は続ける。
『せっかくその顔で生まれたのに、勿体ないだろ』
言われた意味が分からんかった。
『勿体ない』
黒色の彼も腕を組み、言う。

『じゃあ、私達の学園に来てもらわない?』
『嫌』
赤色の彼女の言葉に、黒色の彼が機嫌を悪くする。
『俺には関係無い』
青色の彼は、ずっとうちの方を向いてくれへん。
『僕はどうでもいいよ』
水色の彼は笑わへん。
『母さんにはどう言うの?』
緑色の彼は真面目に聞く。

『理事長の泉にはお願いする。お金も私が出す』
『はあ?マジで入れんの?コイツはあの人を!』
赤色の彼女の言葉に、カッとなった青色の彼は立ち上がり、赤色の彼女の前へ行き、そう叫ぶ。
『・・・そうだけど。でも、これはまるで生き写し。だから、側に置いておきたいの』
赤色の彼女は言い返す。
目を伏せて、微笑みながら。
妖しく、美しい。

その瞬間、空気が変わった。
『分かった。母さんには出来るだけ伝えておく。』
緑色の彼も立ち上がる。
『いいよ。』
黒色の彼も。
『僕も。』
水色の彼も。
『依恋がそこまで言うんならいい。』
青色の彼もうちの方を向く。
5人は立ってうちを見る。

『・・・え?』

『姫莉、行きたい高校ある?』
赤色の彼女がうちに微笑みながら聞く。
『えっと、桜蘭学園高等部に・・・』
『姫莉って家の人何やってるの?』
さっきまで、うちに興味すら示さなかった水色の彼が、うちに笑いかける。
『昔は会社を』
『家族構成は?』
黒色の彼もうちに聞く。
でも、相変わらず、無表情やった。
『お母さんは、生まれた時からおらんくって、お父さんは、さっき、先生がおらんって言っとった』
『そっか』

赤色の彼女は、少し考える素ぶりを見せたが、
『後で新しい家案内するね。』
笑顔でそう言った。
『え・・・』
言っている意味が分からん。
『新しい家、あげるね!』
満面の笑みで言われた。
『え、そんな・・・っ!』
『黙って貰えよ。』
青色の彼がそう、睨んでくる。
『う、うん。』

申し訳ない気持ちと、自分が情けない気持ちが、混ざって溶けた。
お金持ちは家ですらこんな簡単に人にあげたりするんや。
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