私達の狂った歯車
★希side★

「はは。そっか」
叶夜と姫莉は笑い合った。
「良かったね。おめでとう、姫莉」
依恋は、微笑みの仮面を顔に貼り付ける。
「ありがと!依恋のおかげだよ~!」
「ううん。私は何もしてないよ。ただ、姫莉が凄く魅力的な女の子だっただけ」

見事に演じている。
演じきっている。
依恋は凄いよ、本当に。
本当はそんな事思っていなくとも、言葉にするのはいつもの事だ。
だが、独占欲の強い依恋だ。
心の奥では叶夜を取られたという、姫莉に対する嫉妬、恨みでいっぱいなのだろう。

やっぱり、依恋が可哀想だ。
本当は姫莉の事が凄く嫌いなのに、こうやって表ではちゃんと“友達”をしなければならない。
姫莉の顔がマリアにそっくりだったばかりに。
性格は全然違うのに。
むしろ正反対だ。

なのに、顔が同じなだけで、依恋を苦しめる。

依恋はただ、マリアの代わりを側に置いておきたいだけなのに。
依恋はマリアがいる事で、より綺麗に咲き誇る。

「ねえ、そう言えばさ」
互いに褒め合っている2人にイラ付きを隠さず、俺は切り出した。
「依恋って初等部の時、孤廻の事好きだったよね?」

孤廻と言う名前を聞き、麗王が笑う。
「あの頃は楽しかったな。僕達よく遊んだよね~。あの時はマリアと羅音、あと二人もいて、毎日が楽しかったよ。特に僕と孤廻で羅音に女装させた時かな~?あれはヤバかったね。みんな羅音の写真めっちゃ撮ってたし」
懐かしい。
あの頃は本当に楽しかった。

「え?マリアって・・・」
姫莉が声を漏らす。
「は?お前マリアの事知ってんの?」
宙が花を触る手を止めた。
「い、いや。知らない、けど」
姫莉が焦る。
明らかに目が泳いでいる。
姫莉は嘘を吐いている。
何故だ。
一体どうやってマリア情報を手に入れた。
考えられるのは1つ。
「叶夜に教えて貰ったんしょ?」
俺は視線を叶夜に向ける。

「え・・・?何で?」
麗王が表情を引きつらせた。
「別に」
叶夜は表情一つ変えず言う。
あ、否定はしないんだ。
「はあ?あの件は絶対に出さねぇつったろ!?俺逹で墓場まで持って行く約束だ。あれは俺逹だけの秘密なはずだ」
宙が下から叶夜を睨む。

「そんな事知っている。けど、お前逹は何時まで姫莉を仲間外れにするつもり?表面では仲良くやっている。でも、本当は?お前逹は姫莉の何処が好き?」
叶夜はみんなに問い掛ける。
だが、誰1人として答えようとはしない。

「・・・顔、だけ。」
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