私達の狂った歯車
依恋は病気だ。
解離性健忘と言う病気だ。
この病気は、強いストレスの原因となった過去の出来事や、感情の一部、全てを忘れ、思い出そうとしても思い出せ無くなってしまう。
確かに記憶されているはずで、通常なら簡単に思い出せる様な体験など、自分に纏わる大切な情報が思い出せない。
『自分は誰か』『何処へ行ったか』『何をしたか』『その時どう感じたか』など、自分が関わった出来事についての情報を、思い出せ無くなってしまう。
原因は俺にも分からない。

その時、麗王が咲と共に部屋に入って来た。
「お知らせ頂きありがとうございました。これからも何卒よろしくお願い致します」
咲は深々と頭を下げ、依恋をお姫様抱っこして連れ行った。

「じゃあ、僕達も帰ろっか」
麗王がドアに手を掛けながら言う。
「おう。希は?」
「あー。俺はいいや」
麗王と宙を見送り、俺は本校舎へ向かった。
理事長である母にお願いをする事があるからだ。

一ヶ月後に転入予定である、孤廻と羅音の転入を早めて欲しいと頼む。

少しでも依恋に日常を楽しんで貰う為だ。
依恋の為に。
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