私達の狂った歯車
勿論、5分でなんて無理だった。
どれだけの距離があると思っているんだ。

「ねぇ、放送で呼ばれるの恥ずかしいんだけど。今度からは違う方法にしてくんね?母さん」
「お黙りなさい」
理事長は真剣な表情で私達を見た。
「分かったって・・・。で、何?」
希と理事長は真剣な表情でお互いの顔を見ていた。
この2人が真面目なのは凄く稀だ。

実はさっきまた、桜花のあの子かられんが届いたのよ。しかも、直接電話で。で、何かS・Aクラスの制度を廃止するらしくて・・・。はぁ、どう思う?S・Aクラスを無くすらしいわよ?」
理事長は呆れた様に肩をすくめた。
「S・Aを無くすって・・・!ただでさえ私達は他の人達と違うのに・・・」
私は理事長に言った。
「取り消しは出来ないんですか!?」
そう、訴えずにはいられなかった。

私達S・Aクラスの生徒は他とは違う。
大き過ぎる家の力に飲み込まれてしまった者が集うS・Aクラス。
家の事で何か言われ、優しくされるのは嫌だった。
家の力に媚びようとする者。
家の力に恐れをなす者。
家の力を恨む者。
家の力を憎む者。
家の力を良く思わない者。
大人も子供も、彼らが見ていたのは私達自身では無く、私達の後ろにある家の力だった。
幼い頃、そんな彼らに利用され、イジメられたのはまた別の話。

「・・・そうだよ。今まで散々酷い目に遭って来たじゃん。S・Aが無くて」
麗王は目に涙を浮かべる。
それを見て理事長は笑った。
「ごめん、言い方を間違えたわ。ただ、S・Aクラスの名前を“ナイトクラス”にするだけよ。名前だけが変わるみたいなもんよ。ほら、今S・Aって授業無いでしょ?教育委員とかPTAが五月蝿いのよ、そう言うのって。だから、ちゃんと授業してるよ〜ってしないと駄目なの。勿論、これはただの表向き。私は、将来世界に立つ子は勉強よりも、今しなくてはならない事があると思っているわ。貴方達には、そういう事をして生きて欲しいの」
< 55 / 61 >

この作品をシェア

pagetop