人形師と武士(もののふ)~魔女の瞳番外編~
振り向くと、そこには蘭花が立っていた。

「剣のお稽古ですか?」

「…生前も、死して霊となった後も」

俺は背を向けたまま言う。

「何百年となく続けてきた事ゆえな」

「時貞様ほどのお侍様でも…ですか?」

蘭花が少し驚いたように言う。

俺はゆっくりと振り向いた。

「気の遠くなるような、長い時間をかけた反復…年月をかけた修練のみが、俺を剣豪として維持させる事ができる。努力なくして剣腕は磨けぬ」

「…そうなのですか…時貞様でさえ、努力は決して怠らないんですね…」

感服したように、蘭花は、ほぅっ、と溜息をついた。

「して…何用だ?蘭花」

「あ…はい、朝食の支度ができましたので。呼びに参りました」

蘭花は微笑む。

「時貞様は、和食がよろしいのですよね?」

「うむ」

俺は歩き出す。

「日本人の朝食は白米に限る」


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