人形師と武士(もののふ)~魔女の瞳番外編~
ただ、時計の針の音だけが応接間に響く。

静寂に包まれた洋館。

俺は窓際に立ち、蘭花は椅子に座している。

互い言葉を発さぬまま、静かに時が過ぎるのを待つ。

…ある程度の予想はついていた。

俺が菊花ならば、動くのは夜だ。

屍の群れが蠢くのは、夜と相場が決まっている。

加えて向こうは多勢。

闇に乗じて大軍で攻めれば、確実にこちらの綻びをつく事が出来る。

夜討ち朝駆けは兵法の基本だ。

蘭花とて人形師とはいえ、その根底は魔女だ。

その程度の事は理解しているだろう。

…俺と蘭花、共にただ夜が更けるのを待っていた。

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