人形師と武士(もののふ)~魔女の瞳番外編~
肉塊は、巨大な屍となって俺達の前に立ちはだかった。

「待たせたわね、これが私の最大の死霊魔術よ」

菊花が満足げに屍の巨人の前に立った。

「…死肉の巨兵(デッド・ゴーレム)」

蘭花が呟いた。

魔力によって術者の意のままに動く巨大な人形。

かつて四門メグと戦った魔女が、泥の巨兵(マッド・ゴーレム)を、四門メグ自身は石の巨兵(ストーン・ゴーレム)を操ったという。

菊花の造り上げた死肉の巨兵は、それらに比べるとそれほど大きくないものの、それでも優に5メートルは超える巨体であった。

「人形師の蘭花が死体人形に命を絶たれるなんて、気が利いてると思わない?」

クスクスと笑う菊花。

「菊花…貴女はそれほどまでに私を…」

蘭花が絶望的な表情を浮かべた。

その顔が見たかったのだと言わんばかりに。

「ええ、殺したいわ」

菊花は事も無げに言ってのけた。

「私の唯一の才能を奪い去ろうとするんだもの。蘭花姉さんだってこのくらいの代償、当然でしょう?」

< 42 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop