人形師と武士(もののふ)~魔女の瞳番外編~
菊花はゴーレムを見上げる。

「さ、遠慮は要らないわ。姉さんを叩き潰してあげて」

歌うように言う菊花。

主の言葉に反応して、死肉の巨人は一歩を踏み出す。

その歩によって起きた地響きが、静まり返った森を揺らし、眠りについていた鴉どもが驚きに飛び立った。

この巨人を阻める者は誰もいない。

「……」

そう、この俺を除いては。

俺は攻城刀を片手に、死肉の巨人の前に立ちはだかった。

「感心しないわね」

気にいらなげに菊花が言う。

「いくら蘭花の作った精巧な人型とはいえ、ゴーレムの一撃に耐えられるほど頑強じゃないわよ?」

「承知している」

「ただの死肉の集まりだと思って馬鹿にしてもらったら困るわ。ゴーレムの剛力に敵う者なんて存在しないんだから」

「それも承知している」

「だったら!!」

菊花は癇癪を起こしたように叫ぶ。

「さっさとそこを退きなさい!私は蘭花を殺すの!!」

「……」

俺は攻城刀を正眼に構えた。

「出来ぬ相談だ」

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