人形師と武士(もののふ)~魔女の瞳番外編~
次に菊花を見る。

「己の選んだ道に誤りはないと自負しているか?」

「も、勿論!」

菊花は強く答える。

「ならばなぜそれを言葉で蘭花に伝えぬ?何度否定されても、言葉で、心で蘭花を説得せぬ?己の思い通りにならぬと力に訴える…分別のつく者のする事ではなかろう」

「……」

俺の言葉に、菊花は口を噤んだ。

「如何にその道を極め、如何に大成しようと、力で押し通して選んだ道など誰も認めぬ。真に己の道を正当化したければ、説き伏せて見せよ。結果で証明せよ。否定する者を肯定させてみせよ。暴力に訴えるなどと愚の骨頂」

…その言葉を聞きながら、菊花は俯き、涙を流した。

そんな彼女に。

「菊花」

蘭花はそっと近づき、ハンカチを差し出す。

「おねえ…ちゃん…」

くしゃくしゃになった顔で、菊花が蘭花を見つめた。

「もう一度、話し合いましょう?お互い納得の行く形で、結果を出しましょう?殺し合いなんかより、ずっといいわ」

「…うえっ…おね゛え゛ぢゃん゛…っ、ひぐっ…」

蘭花の胸に寄り添う菊花。

菊花を抱きしめる蘭花。

…最早俺の出る幕はあるまい。












穏やかに笑みを浮かべ、俺は背を向けた。



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