人形師と武士(もののふ)~魔女の瞳番外編~
天羽。

その姓には覚えがある。

姫を昇天させた四門メグが連れていた仲間の中に、同じ姓の娘がいた。

あれも確か魔女だったが…。

「お主も魔女か…?」

「…一応は魔女の真似事もできます」

蘭花というその娘は、控えめに笑う。

背中まで伸びた艶やかな黒髪。

自己主張し過ぎない穏やかな物腰。

大和撫子と呼ぶに相応しい娘であった。

だが。

この娘も『天羽』と名乗る以上、ただの淑やかな娘ではあるまい。

まずは単刀直入に疑問をぶつける。

「何故俺はこの世にいる?俺は桃香姫の成仏と共に、昇天した筈だが」

己の頬を撫でながら呟く。

ご丁寧に髻(もとどり)で結わえた伸び放題の髪の毛も、無精髭までも生前のままだった。

「蘭花とやら、お主が俺を蘇らせたのか?」


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