人形師と武士(もののふ)~魔女の瞳番外編~
蘭花は困ったように俯く。

「時貞様の疑問はもっともです。一つずつ、順を追ってご説明いたします。致しますから…」

ズイと。

蘭花は洋服一式を俺の鼻先に差し出す。

…地縛霊だったとはいえ、数百年も現世に留まっていたのだ。

この服装の名前くらいは知っている。

ダークのスーツ一式と、詰襟のワイシャツ。

俺に着ろという事らしい。

…見れば俺は一糸纏わぬままの姿であった。

成程、婦女子の前でこの格好はいかんか。

俺は蘭花から洋服を受け取った。

…見知ってはいるものの、洋服を身につけるのは初めてだ。

剣術に打ち込み、俺の体は刀傷と筋肉に覆われている。

お世辞にも細身とは言えぬ俺の体格に、このスーツという奴は少々窮屈だったが、まぁ仕方あるまい。

「さぁ、話してもらおうか」

俺は改めて蘭花を見た。

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