今度会ったら何をしようか

後日、計画書を持って朝比奈教授の元に向かうと、教授はそれをじっくり読み、訂正部分を指摘し、別の視点からも実習を行うようにアドバイスをもらった。計画書が完成したのはそれから一週間ほど経った頃だった。その間に、教授はさくら園と連絡を取り、実習の受け入れが決まった。
「うん、これなら計画的に実習できるでしょう」
太鼓判を押され、残るはさくら園との事前打ち合わせを残すのみとなる。
「大倉さん、今回の実習担当の方なんだけど、どうやら今年から任された方らしいんだ。だから、打ち合わせの時にしっかり君の意向を伝えておくんだよ」
事前打ち合わせで担当者と話を詰めないでいると、のちのち実習がやりにくい事は前にも聞かされていた。中には思った通りに満足いく実習ができずに終わる学生もいるとか。計画書に基づくものの、この打ち合わせで実習の方向が変わる場合もあるのだ。
「はい」
不安気な声で返事をしつつ、一瞬、あの人が担当者だったらいいのになぁと思う。
「まぁ、基本的に途中で実習辞めて帰ってくる学生はほとんどいないから、大丈夫だと思うけどね」
教授は慌てて言葉を付けたし、いつものようにへらへら笑ってみせた。
事前打ち合わせの日程は学生が施設に電話して決める流れだったので、相手方に失礼のないようにとだけ忠告されて、私はお礼を言って研究室を出た。
決まったとなれば早めに電話しておこうかな、と静かな場所を探し、さくら園のダイヤルを押す。その前に、深呼吸をして緊張を解すことも忘れなかった。
コール三回目で電話が繋がる途中も、少し足が震えていたと思う。
「さくら園です」
若い声の職員が出る。
「こ、こんにちは。えっと、A大学三年の大倉という者ですが」
「あ、もしかして実習の件ですかね」
「そ、そうです。担当の方とお話をしたいのですが」
落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせる。
「いますよ。少々お待ちください」
はい、と返事をしてどこかで聞いたことのあるクラシックのメロディが流れる。
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