今度会ったら何をしようか
僕から見た君

その日は優子とのデートだった。デートといっても、彼女のアパートで泊りがけで一日過ごすというものだ。付き合い始めた頃は、ランチに出掛けたり、美術展に行ってみたり、ちょうど夏に付き合ったこともあって海にも出掛けたりしていた。それがいつしか、優子はアパートに閉じこもるようになり、僕達はモグラのような出会い方しかしなくなった。
「斗真、お昼ご飯できたよ」
今日の優子は体調がとても良く見えた。昨日の夜、いつものように発狂したかのように電話をかけてきた優子とは別人のように見えた。だが、これが「優子」なのだ。僕がいないと不安定になってしまう優子も、目の前で笑顔を見せる優子も同一人物なのだ。
「ありがとう」
そう言って、僕はローテーブルに近付く。一週間ぶりの彼女の部屋は、前よりも荒れていた。病院からもらった睡眠導入剤が転がっているのを、そっとつまんでテーブルに置く。
「落ちてたのね」
その様子を見ていた優子は、人事のように笑う。
「うん、置いておいたよ」
僕もなんにも気にしていない素振りで答える。優子はサラダと鮭のムニエルを並べだし、六個百円で売られているロールパンをそのまま持ってきた。
「今日も斗真のために肉なしメニューだよ」
満足そうに僕を見つめる優子が笑う。彼女が僕を必要以上に求め始めた頃から、彼女が作る料理に一切肉が使われなくなった。それは僕の健康を気にしているから、だと初めは説明したがそのうち外でも家でも肉は食べるなと言うようになった。窮屈に感じつつも、僕はそれを守っている。見えないプレッシャーがそこにはあった。
「ありがとう。いただきます」
そう言って僕はサラダを口にする。いつもの事ながら、ドレッシングはかけられていない。僕は気にせず口に運ぶ。
「ねぇ、斗真」
その様子を見ていた彼女が口を開く。
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