今度会ったら何をしようか
僕と君の出会い
「穂波さん、もうすぐミサンガ終わりそうだよ」
たっくんがそう言う。
「じゃあ、段ボールにまだ入っているから持ってきてもらえるかな」
僕はテントの裏を指差して伝える。たっくんは「はいよー」と大きな声で答えて小走りで向かっていった。
「たっくん、今日は調子いいみたいですね」
その様子を見ていたスタッフが安心したように笑う。
「そうなんですよ。昨日は少し心配だったけどね」
今日は久しぶりの出張販売。僕は福祉施設で働く職員だ。利用者が日中活動で作った作品やクッキーをスーパーの前で売りに出る。地域のお祭りや、他の施設の行事なんかにも行くことがある。地域住民との関わりは僕のいる施設の大きな強みだ。利用者も施設にいる時とはまた違った表情を見せてくれる。
たっくんは昨日、他の利用者とトラブルがあって気持ちが落ち込んでいたから、今日は通園できないかもな、なんて思っていたけど元気に通園してきた。
「穂波さん、昨日はたっくんのケア大変だったでしょう」
「まぁね」
ミサンガを運んできたたっくんを横目に、僕は苦笑した。
「でも、今日は良かったです。みかちゃんのミサンガも売れているし」
みかちゃんは重度の自閉症を抱えるが、手先が器用なうちの大切なミサンガ職人だ。彼女が販売に出るにはもう少し訓練が必要だが、いつか彼女が作ったミサンガを彼女の手で売りに出られればいいと思っている。
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