今度会ったら何をしようか

僕は記憶を辿る。最近、どこかで見た顔だ。
「A大学三年、大倉椿です。三週間、よろしくお願いします」
一また、よろしくお願いします一
深々と頭を下げる彼女に、一気に疑問が解ける。この前、ぼんやりしていた時に買い物に来た高校生だ。いや、正確には大学生だったのだ。
「あ、ああ、えっと、よろしくお願いします」
いつか交わした会話のようなデジャブを感じ、僕は戸惑う。
「えっと、とりあえず向こうで話しましょうか」
「お願いします」
また頭を下げると、光沢のある綺麗な黒髪が揺れる。彼女は履き慣れていなさそうなパンプスを脱ぎ、靴箱に揃える。丁寧に、それでいて無駄のない動きは、幼い見た目からは想像がつかない上品さを感じる。以前に会った時にも彼女の不思議な魅力を感じていたが、一つ一つの動作が美しい。なるほど、と感心していると、大倉さんはきょとんとした顔で僕を見つめた。
「あの、何か変でしたか」
「えっ、いや」
そういえば、前もじっと彼女を見つめていた自分を思い出し、格好が悪いぞと心の中で言い聞かせる。
「こちらです」
一呼吸おいて彼女を促し、食堂へと入る。アイちゃんが興味ありげに窓を覗き、
「穂波さん、学校の人来たの」
と聞いてくる。「うん、後で自己紹介してもらおうか」と答えると「はぁい」と嬉しそうだ。アイちゃん実習生が好きだからなぁと思っていると、大倉さんは「また後で、お話しましょうね」とにこやかに接する。「はぁい」と声をあげたアイちゃんは活動部屋へと去っていく。
「大倉さん、なんだか慣れてる感じがするね」
彼女が椅子に座ったところで、僕は心からそう思い彼女に伝える。
「あ、いえ、すみません」
僕が嫌味で言ったと思われたのか、彼女は申し訳なさそうに俯く。
「いや、本当に。あ、嫌味じゃなくて」
慌てて手を振ると、彼女は顔をあげ、そして恥ずかしそうに笑みを浮かべた。