今度会ったら何をしようか
あんまり見ていたら変態だと思われるな、と頭の片隅で思いつつも、僕はその子から目を離せない。なぜだか分からないが、その子にはそんな魅力があった。
「あの、じゃあ、えっと、一つください」
その子はまた俯くと、桜クッキーを手に取り小さい声で言った。
「あ、ありがとうございます。えっと、百円です」
僕もつられるようにしどろもどろになりながら、答える。その子は小さなショルダーバッグから薄桃色のお財布を取り出し、僕に百円を手渡した。
「ありがとうございます」
もう一度お礼を言うと、また僕を見上げ、気恥しそうに笑う。

「また、よろしくお願いします」

その子はそう言って深々と頭を下げ、小走りで去っていく。今時珍しいタイプの子だな、なんて思いつつ-また、よろしくお願いします-その言葉に疑問を抱いている時だった。
「穂波さん、スッキリしたよ」
たっくんの大きな声が春の風にのって聞こえてきた。
< 5 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop