キミに嘘を吐く日
西条さんの手を握ったみたいに、宇野くんの両手をそっと握った。

当たり前だけど、大きさもその温かさも違う。

この手は好きな人の手なんだって思ったら、ちょっと恥ずかしくなって手を離した。

直後、宇野くんから握られてハッとして彼の顔を見上げた。


「なんだか、少し見ない間にいろはがすごく大人になったみたいに見える。自分のガキさに目眩がしそうだ」

「そんなことないのに……」

「な、いろは。俺は西条が言うみたいにヘタレで情けない男だけど。強がりや嘘もつくけど、でも、いろはに伝えた言葉は嘘じゃないよ。嘘だって高田に伝えてって言ったけど、でも本心じゃない。両親の離婚で人の気持ちがあやふやで脆いものだって思ってたから、離れるって分かってたから嘘をついた。でも、離れても俺の気持ちは変わらなかった。きっとこれからも変わらない。いろはが会いに来てくれたことで、いろはもそうなのかもしれないって思った。それに……いろはは、俺が思ったよりもずっと強いよな。だから……」


宇野くんが小さく息を吸ったのが分かった。

何かを言おうとしてくれているその前の空気。

でも。


「距離が気持ちが離れる理由にはならないって、私達で証明しようよ。宇野くんの両親は距離が原因だったのかもしれないけど、少なくとも私達は違うって思えるように私も頑張るから……だからね、」


私は宇野くんに想いを伝えるために会いに来たっだ。

だから、これは譲れない。

想いを伝えていいのなら。誰も傷つけずに想いを貫けるなら、私が選ぶ道は一つだけだ。

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