キミに嘘を吐く日
「休み、無駄に長いよな」

「えっ?」


重ねてある本を全部捲るのかと思っていたところに、視線を上げずに独り言みたいに呟いた彼の言葉をうっかり拾ってしまった。


「1ヶ月近く春休みがあっても退屈なだけだと思って。バイトだって禁止だし」

「……そう、かな」


宇野くんも、予定のない日は退屈だと感じてしまう人種なのだろう。

私とは逆の。


「御門さんは違うみたいだな。1人を満喫してますって……そんな感じ」

「ぼっちだからね」


少し卑屈な気持ちが込み上げてきて、ツルッとこぼした。

言った後でしまったなと思ったけど、遅い。


「『ぼっち』って、それを望んでいないのに1人になってしまう淋しい感じがするけど、御門さんは『ひとり』を楽しんでるよな」


1人を楽しんでるって初めて言われた。

ひとりが好きなんだろうとか、周りに壁を作ってるって言い方をされることはあったけど。


「ひとりでいても平気そうだけど、ドアはちゃんと付いてて、こんな風に俺のノックに答えてくれる」

「宇野くんって変な人だね」

「変な人……かなぁ。まぁ、確かに趣味はマンウォッチングだけどさ」

「クラスメイト全員を観察してたの?」


マンウォッチングとはそういうことだろうか?

赤の他人から観察してるって言われて気分のいい人はいない。

私の言葉に、首を傾げて考える様子を見せていた彼は、少しして手のひらをポンと叩いた。


「全員ってのはないな。興味がある人だけ」


あっさりと言い放った宇野くんをまっすぐに見た。

それって、私に興味があるって言ったんだろうか?
< 11 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop