キミに嘘を吐く日
「「私の、俺の、彼氏、彼女になってください!」」


握り合っていた手をお互いに握りしめる。

そして思い切って口にした言葉は全く同じものだった。


「今の、俺が先に言えたよな?」

「え?私の方が先に言えたよね?」


どっちが先かなんて関係ないのに、言い合う私達。


「どっちが先でもいいじゃん。同じセリフだし、同じ返事でしょ?」


私達が言い合うその場所の真上から、呆れたような声が響いた。

驚いて見上げた宇野くんと私の視界には、さっきまで側にいた川原くんと西条さんだけじゃなく、今回の旅行の御一行様がズラリと岩壁の上ホテルの中庭の柵から見下ろしている。

えー、嘘。いつから見られていたわけ?


「お、お前らっ、いつからそこに」

「最初から」


高田くんがベーと舌を出しながら、冷たく言い放った。


「高田、お前……」


宇野くんが真っ赤になって怒ってるけど、高田くんはさらりと反撃する。


「俺だってお前のヘタレに振り回されて迷惑したんだからな?これくらいの報復は甘んじて受けろ」

「な、な、な、」


高田くんが怒るのも無理はない。結果彼にも可愛い彼女ができたのだから、良かったと思うけど、その経緯については今は言わない方がよさそうだと口をつぐんだ。


「いろは、良かったね」


市原さんがとびきりの笑顔とピースサインをくれた。

私も同じように返す。

隣に立つ宇野くんは未だ上にいる高田くんと、それに加わった川原くんからからかわれて怒っているけど、それだってすごく楽しそうで私は見ていて嬉しかった。
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