キミに嘘を吐く日
「やっぱり宇野くんって変な人」

他にいう言葉も見つからなかった。

きっと嫌な思いをさせたかもしれないけれど、それで彼と距離ができるのなら、ま、いいか。

そう思ったのに……。


「そっか。できれば褒められた方が嬉しいけれど、変な人っていうのでもいいか。御門さんの中で、俺は変な人としては存在出来てるってことだもんな」

言葉を失うというのは、きっとこういう時のことだと思った。

宇野くんのこういうポジティブさは、学校では見たことがない。

距離をとって離れた分の半分だけ、距離を詰められた気分になった。

プラマイゼロにはならない分、押し付けられている感じが少ない。


「あ、本を読むのを邪魔してごめん。今日はもう帰るわ」


じゃあな、とその場を去っていく彼の背中を唖然として見つめた。

言いたいことだけ言って、あっさり帰ってしまった。

なんだか、拍子抜けした気分だ。

彼がもっと距離を詰めて来ようとしたり、押し付けがましい態度をとったのなら、遠慮することなく邪魔だと言えたのに。

よく分からなくて胸の隅っこが変な感じ。

糸が絡まって解けなくて、イライラしてくる少し前の、そんな気分。

すっかり本を読む気が失せてしまって、私は本棚へ本を返して早々と図書館を出た。

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