キミに嘘を吐く日
「御門ー、腹減らない?」


2冊目の本を読み終わった頃、宇野くんが声をかけて来た。

多分、私が読み終わるタイミングを待っていたようだ。


「ん、ちょっと……待って」


2冊目の本という事は、つまりは宇野くんが感動して泣いていた本を読んでいたわけで。

彼ほどボロボロ泣きはしないけれど、それでも胸に詰まる思いはあるわけで。


「うん、待つ」


そう言うとスマホを取り出して多分ゲームなんかを始めたようだった。

何度か深呼吸を繰り返して、気持ちが落ち着くのを待って、そしてふと我に返った。

あれ?どうして私「待って」なんて言ったんだろうか?

待ってと言ってしまった以上、声をかけるしかなくなってしまったのだけど。


「宇野くん、私まだ本読んでくつもりだから……」

「え、昼飯食わないの?不健康だなぁ、ここカフェがあるから軽く食おうぜ」


言いながら既に腰を浮かしている。


「ほら、御門行くぞ」

「えっ、ちょっと……」


有無を言わさない強引さは、普段の私なら突っぱねるところなのに、何故か従ってしまっている。

いつのまにか呼び捨てだし……。

宇野くんの後をついていきながら、なんとなく、なんとなくだけど、心の隅っこに今まで感じたことのない暖かい色が染み付いた気がした。





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