キミに嘘を吐く日
だけど、嬉しかったり、楽しい事もあった。

他のボランティアさん達と仲良くなって、一緒に図書館で行われる絵本の読み聞かせ会の掲示物を作ったり、絵本の読み聞かせにきた子供達の真剣な表情に触れ、「楽しかった!」と喜ばれた時は本当に嬉しかった。

自分達が関わった事で、誰かが喜ぶ姿を見ることができることの素晴らしさを知ることができた。


「宇野くん、私ね図書ボランティアして良かったよ」


知らなかった世界を知ることができて、嬉しかった。

それも、宇野くんが一緒に図書ボランティアに参加してくれたおかげ。

私の世界が少し広がったのは、宇野くんのおかげなんだ。


「俺も、良かったよ。いろはのそんな嬉しそうな顔を見ることができて」


いろは、と呼ばれた瞬間、胸がトクンと小さく跳ねた。

男子に名前を呼ばれたのは、初めてだった。

そして、それが宇野くんだから、もっと特別に響いた。


「宇野くん、ありがとう」


そうお礼を言うのが精一杯で、他に何も言えなかった。

もっともっとたくさん言いたいことはあったはずなのに、胸がいっぱいで、苦しくて、何も言えなかった。

私、宇野くんとこんな風に話せるようになって、彼に優しくしてもらえて、本当に幸せ者だ。
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