キミに嘘を吐く日
「宇野くん……」

「いろは、外に行こう。海もっと近くで見たくない?」

「う、うん」


宇野くんに手を引かれて水族館を出た。

海の側を歩きながら、隣に並ぶ宇野くんの横顔を見上げる。

なんだか少し寂しそうな、そんな横顔に急に不安になった。

宇野くん、明後日の図書ボランティアでまた会えるよね?

新学期、クラスが一緒かは分からないけれど、学校でだって会えるよね?

言葉にして聞けばいいのに、何故だろう聞けなかった。

ただこうして隣に並んで歩けている奇跡が、パッと消えてしまいそうな……なぜかそんな不安が襲って来て仕方なかった。


「くしゅんっ、」


急に鼻がムズムズしだして、クシャミが出始める。

海の側なら花粉の量も少ないだろうと思ったのに。本当に花粉って嫌だなー。

せっかく宇野くんと2人で歩いているのに。


「いろは、寒い?大丈夫?」

「ううん、これ、多分花粉だから」

「そっか。じゃあどっか中に入ろっか」


花粉は場所を選ばないからなと笑いながら、近くの店まで2人で走った。

宇野くんはこの日ずっと手を離さずにいてくれた。

海の側の観光案内所に展望台があって、そこへ登った。

近くで見るのとは違って展望台からは、水面の反射がキラキラと遠くまで光って見える。





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