キミに嘘を吐く日
five color


「いろは、今日から新学期でしょう?遅刻しないように早く出なさいよ」


母の急かす声を背に、私は既に玄関で靴を履いていた。

分かってる。
言われなくても今日は早く行くつもりだった。

だって、早く会いたいから。

宇野くんに。

会いたいよ。

そして聞きたい。

どうしてあの日以来会えなくなったのか、連絡すら取れなくなってしまったのか。

今すぐ聞きたくて仕方ない。

あの日、水族館のあと家の近くまで宇野くんは私を送ってくれた。

翌々日の図書ボランティアの日に会う約束までした。

それなのに、彼は姿を現さなかった。

春休みの間、図書ボランティアには一度も来ずに、館長から「宇野くんからは既にボランティアをやめることは聞いていた」と後になって私は聞かされた。

RINEも既読もつかない。

電話は全て留守番電話に繋がってしまう。

もしかしたら、私はあの日宇野くんに嫌われることをしてしまったんだろうか?

好きだと言ってもらって、有頂天になって彼を傷つけてしまったんだろうか?

いくら考えても分からなかった。

それでも私は諦めていなかった。

新学期になれば、学校できっと会えると思っていた。


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