キミに嘘を吐く日
「……な、い?」


下駄箱に貼り出されたクラス名簿を理系から文系迄全て見て回った。

そのどれにも宇野 色葉という名前は存在しなかった。

どうして?
だって、宇野くんはこの高校で進級した筈だ。

どうして宇野くんの名前がないの?

何度も何度も、周りの人が私の様子におかしいと感じているだろうって分かっても、それでもなんども繰り返してクラス名簿を見て回った。

まさか、先生が名前を書き忘れた?
そんな信じられないことまで考えて、全てのクラスを見て回った。

始業式が始まる時間になってようやく自分のクラスに戻って、廊下に並んだ。


「……おはよう」


不意に聞こえた男子の声にハッとして顔を上げた。

でもそこにいたのは宇野くんじゃない。

宇野くんの幼馴染だと聞いていた高田くんだった。

そうだ。

幼馴染の彼なら、もしかしたら宇野くんが今どこにいるか分かるかもしれない。


「た、高田くんっ、宇野くんは?」


私の言葉に驚いた表情で彼は私を見下ろした。


「宇野?なんで、アンタが宇野のことを気にするの?」

「え?」

「だって、アイツのこと振ったんだろ?だったら今更アイツのことなんて気にすることないだろう」


高田くんの言っている意味が分からない。

誰が、誰を振った?

目の前の高田くんは怒っている様に見えた。


「今更惜しくなった?バカじゃねえの?宇野がアンタを気にしてたのは、ぼっちでいたアンタに同情していただけだろ。それを何様のつもりだよ?今更振ったこと後悔したって遅いっての!」


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