キミに嘘を吐く日
高田くんの口から出る言葉がどれも自分には身に覚えのないことで、訳が分からなかった。

違うと言いたいのに、目の前の彼はすごく怒っていて声すらかけられない。

どうして、振っただなんて。

私は宇野くんを振ったりしていない。

どうして初めて好きになった人を振ったりするの?

好き。宇野くんが大好き。

あの水族館に行った日に宇野くんに伝えた言葉は嘘じゃない。

それなのにどうして高田くんはそんなことを言うの?

違うのに……。


「こら、そこ。なにかもめているのか?」


担任だと思われる先生が、高田くんと私の側まで近寄ってきた。

うまく説明できない私は、黙って首を横に振った。

俯いて、高田くんをこれ以上怒らせないようにと顔を見ずにいた。


「別になんでもないです」


高田くんがそう言って私から離れて本来の場所へ戻った。

背の高い彼は、後ろの方に並んだ。

始業式が始まって、体育座りで校長の話を聞くのだけど、私の頭の中は高田くんの言葉がグルグルと回っていた。

宇野くん、宇野くん、どうしてここにいないの?

どうして高田くんは私が宇野くんを振ったと誤解しているの?

考えても分からなかった。

でも、一つ分かるのは、高田くんは今宇野くんがどこにいるのかきっと知っているということだ。

高田くんにちゃんと話して、宇野くんの居場所を聞かなくちゃ。


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