キミに嘘を吐く日
「私はいろはの事、少しは知ってたよ」

お弁当を広げながら、千早さんがそう言って私を見た。


「なんていうか、人とあまり関わるのが嫌いなのかなって……そんな風に見えた。いつも1人でいたでしょ?」

「う、うん。そうだね」


千早さんが言う通り、1年の頃の私は周りなんて気にせず、自分の世界に篭っていた。

それを居心地がいいと感じていた。人と関わることがとても面倒だと感じていたから。


「私も千早からそう聞いてたし、あの高田を怒らせることをしたんだから、相当ヤなヤツかもって思ってたんだ」


市原さんも千早さんの言葉に頷く。

そんな印象が最悪な私をどうしてここに誘ってくれたんだろう?

不思議に思っていると、市原さんが答えをくれた。

「でもさ、高田に無視されても何度も何度も話かけようと頑張ってるいろはを見たらさ、何だか根性あるなって。高田との因縁は分からないけど、でも嫌な奴って訳じゃないのかもって思ったんだ。それでこのメンバーに話をして、今日こそはって、いつも誘うタイミング見てた」


私が躍起になっている周囲では、こんな風に考えて行動を起こしてくれた人たちがいたんだと思ったら何だかすごく感動してしまった。


「ありがとう。誘ってくれてすごく嬉しい」

「だーかーら、固いんだって」

「あ、ごめん」

「ま、とにかく今日からよろしくってことでご飯食べようよ」


江藤さんに言われて皆んな頷いてそれぞれがお弁当を食べ始めた。

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