キミに嘘を吐く日
何も知らなかった。宇野くんがそんな大変な状況にいたなんて。

だって、ずっと笑ってた。

図書館出会っている時、ボランティアでお手伝いをしている時も、いつだって楽しそうにしてた。

そんな、両親が離婚して、更に実の親から離れなきゃいけなくなるなんて、そんなことになっていたなんて気づきもしなかった。


「宇野、あんまり自分のこと話さないしね。高田とはよく喋ってる姿を見たけど、でもそんな家庭が大変そうには見えなくて、だから噂って範疇を超えなかったんだよね」


市原さんが思い出したように言って、高田くんの方をチラリと見た。


「宇野くんが預けられたっていう、祖父の家がどこにあるか知ってる?」


皆んなが教えてくれたことを全部何も知らなくて、のほほんと過ごして自分が嫌になる。

知らないと皆んなが首を左右に振るのを見て落胆してしまう。


「だから、高田に聞こうとしてたの?」

「うん。でも、高田くんちょっと誤解していて……」

「誤解って?」

「私が宇野くんを振ったって。私が彼を傷付けたって怒ってるみたいなの」

「え?いろはって宇野と付き合ってたの?」


千早さんが驚いた様子で声を上げた。心なしか興奮しているように見える。


「付き合って……ない。ただ一緒に図書ボランティアをしたり、水族館に行ったりしたの。私は宇野くんの事を……好きになって、好きですって伝えた……」


思い出せば昨日のことのように鮮明に思いだせる。

あれは、私にとって特別な思い出。

付き合おうと言われたわけじゃない。だけどずっと隣を歩いて行けると思っていた。

それが急に連絡も取れなくなって、会えなくなって。

どうしていいか分からなくなった。


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