キミに嘘を吐く日
six color
◇
茶原さんに声をかけて、私達は2階席へ上がった。
いつも宇野くんと一緒に過ごした窓際の席は、今日は誰も座っていなくて、彼にその席を勧めた。
「その席で宇野くんよく寝てたんだ」
「図書館で?……まあ、宇野ならそうかもな」
高田くんと向かい合って座っても、すぐには話ができなかった。
考えてみれば、この席に座ったのはとても久しぶりだ。
「私ね、宇野くんのお家の事情全然知らなかった。宇野くんいつも笑顔で、穏やかな表情でいたから、両親が離婚されてたなんて……」
独り言みたいに話し始めた。
今でも思い出すのは宇野くんの笑顔だ。
でも、たまに寂しそうな顔をすることがあって、でもそれはほんの僅かな時間だったから、気のせいかもしれないって自分で勝手にそう思い込んでいた。
誰にだって口にできない、隠したいことはあるのだから、それを無理に聞こうとも思わなかったし。
「別にアンタに同情して欲しいなんて、アイツは思ってなかったからな」
高田くんが返してくれて、それに驚いて顔を上げて彼を見たら、直ぐに視線を逸らされてしまった。
「高田くんは、宇野くんがここに来ていることを、知っていたの?」
視線を逸らされたままだったけれど、構わず続けた。
せっかく市川さんが作ってくれたチャンスを無駄にはしたくないもの。