キミに嘘を吐く日
「いつだったかな……」


高田くんが初めて私と視線を合わせて、少し考えるような素振りを見せた。


「そうだ、春休みの最初の方だ。宇野から連絡があって、アンタをここで見つけたってなんだか嬉しそうに電話してきたんだよ」

「……」

「一度来なくなったって落ち込んで、その時も電話してきたし、図書館でアンタと過ごすようになってからは毎日アンタの話ばっかり聞かされてうんざりしたよ」


うんざりしたと言いながらも、その表情はなんだか楽しそうで、見ている私まで嬉しくなった。

「図書ボランティアをすることになって、館長からもらったってことにした水族館のチケットでアンタと一緒にデートできるって興奮してさ。ウザいっての」

「チケットって、館長からもらったものだったんじゃないの?」

「な訳ねーっての。館長に協力はしてもらったみたいだけどな。高校生の財布事情知らねーのかよ。かなり無理したんじゃねーの?アイツデートは男が金出すもんだって変な意地張ってたから」

チケット代に、電車の切符代に、ストラップまで買ってもらったよ。

真っ青になった私に、高田くんは「アイツ見栄っ張りだからな」と笑った。

高田くんをちゃんと知ってから、彼の笑顔を初めて見た気がする。

少し意外な気がした。

だけど、高田くんだって高校生だもん。

怒りもするけど、笑うことだってあるよね。

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