キミに嘘を吐く日
「好きな子には笑顔でいてほしいですよねって、いつだったか宇野くんが話してたなって」


茶原さんは図書を机に置いて、私の隣に腰掛けた。


「宇野くんは、いろはちゃんの笑顔が見たかったんだと思うよ。1人が平気な人もいるかもしれない。だけど、誰かと触れ合うことで生まれる幸せもあるから、宇野くんはいろはちゃんにそんな幸せを知って欲しかった。宇野くんの中でいろはちゃんとどうにかなりたいなんて気持ちは最初はなかったのかもしれないね。ただ、教室でいつも1人でいるいろはちゃんに違う世界もあるってことを教えたかったんだよきっと。それ以上を望むことは、遠くに離れていく自分にはできなかった。」


茶原さんの言葉を聞きながら、宇野くんと過ごした日々を思い出して、そしたら涙が溢れてきた。


「でも、いろはちゃんの近くにいて、話して、触れて……気持ちがとめられなくなったんじゃないのかな?」

「あの、水族館に行った日の翌々日だよ。宇野がじーさんちに向かったの。水族館に行ったの知ってたから、出発前に宇野に会って聞いたんだ。そしたらアイツ寂しそうに振られたんだって。だから、心置きなく向こうへ行けるんだって……なんか妙にスッキリした顔してやがるから……見てるこっちが痛々しいっての」

「振ってない、よ。ずっと今だって好きだよ」


花粉症の症状が出ているわけでもないのに、顔面崩壊状態だ。

涙も、鼻水も止まらない。

どうして?どうして宇野くん。
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