キミに嘘を吐く日
「いろはちゃんは、どうしたい?」


不意に茶原さんに問われて、考えてみた。

今までの宇野くんと過ごした時間の全部を、宇野くんが高田くんに預けた伝言を聞いたからって、そう簡単に忘れられるわけがない。

はい、そうですか。だなんて、思えるわけない。

だってあの日展望台で伝えた気持ちは……宇野くんから聞いた言葉は、嘘じゃなかったって信じたいから。


「直接会って、話したい……」


本当に全部嘘なら、宇野くんの言葉で直接聞きたい。

高田くんが伝えてくれた同じ言葉を言われたとしても、きっと私の気持ちは変わらないと思うけど。

もし、私の気持ちが迷惑だとしても、離れた場所で思っているだけなら、彼の迷惑にはならないだろうし。

……それくらい許してほしいと思う。


「会いにいっちゃう?」

「え?」


茶原さんの言葉に、私も高田くんも一瞬言葉を失った。

宇野くんに会いに行く?

それができるのなら、私は会いたい。会って話がしたい。


「会いたい……でも、」


その為には、高田くんの協力が必要で。

私と茶原さんが、ジッと高田くんを見つめると、しばらく視線を窓の外に向けていた高田くんが小さくため息を吐いた。


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