キミに嘘を吐く日
「市原さん!」


教室に入るなり、私は彼女の下へ駆け寄った。

何事かと驚いた様子の市原さんに、高田くんと話せたことを伝えたかった。彼女の尽力なしにはなし得なかったことなので。


「どうした、どうした」

「話せたよ。高田くんから宇野くんのことが聞けたの。市原さんのおかげだよ」

「そっか、よかったね」

「でね、ゴールデンウィークに会いに行けることになったの」


昨夜両親にも話した。茶原さんが、あの後うちに来てくれて、自分が保護者として付き添うから旅行を許してほしいって説明してくれた。

旅行の計画は追ってたてることになるけれど、すべてをちゃんと報告しますって、丁寧に説明してくれた。

特に母親は、引きこもりだったことを心配していたくらいで、友達と旅行なんて素敵だわ!と感動していた程で私の心配は杞憂だったわけだ。


「俺も一緒に行くことになったから」


いつ来たのか、背後に高田くんが立っていて、ボソッと落とすように呟いた。


「え、二人で行くの?」


途端に市原さんの顔色が雲って、高田くんの言葉を補足しようと口を開いた。

けれど、私より一瞬先、高田くんが乱暴な口調でいい放った言葉に、市原さんは言葉を失ったように黙り混んだ。


「俺も一緒に行くから、市原、お前も付き合えよ。今度のことはお前にも関係あるんだからな」

「……な、なによ。偉そうに。まぁ、大事な友達がアンタみたいなのと一緒に旅行だなんて宇野だって心配でしょうから付き合って上げてもいいけど」

「おう、じゃ、じゃあ、また計画たてようぜ」

「う、うん。分かったわよ」


なんだか、喧嘩腰な二人のやり取りを見て、気付いてしまった。


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