キミに嘘を吐く日
市原さんの高田くんへの想いは知っていたけれど、高田くんも多分、市原さんのことを想っているのかもしれないって。

だって、2人の間に流れる空気がなんだか温かくて、擽ったい。

ゴールデンウィークに宇野くんの会えることが一番の楽しみだけど、高田くんと市原さんと、茶原さんと皆んなで旅行できるのも楽しみで仕方ない。


「いーろーはー、ありがとう!」


高田くんが離れていき、振り返った市川さんの顔は喜びにあふれていた。


「こちらこそだよ。市原さんが協力してくれなかったら、きっと高田くんにはずっと誤解されていて、宇野くんにはずっと会えなかったかもしれないんだもの」

「楽しみだね」

「うん、楽しみ。市原さんもさ、高田くんとのこと頑張れば?」

「は?いろはってば、な、なにを」

「高田くんって、きっと市原さんのこと市原さんと同じ温度で思ってると思う」

「は?なわけないじゃん!」


真っ赤になって照れる市原さんが可愛くて仕方ない。

私も今までは人の機微には疎い人間で、今だって分からない事ばかりだけど。

何故だろう?

自分に好きな人ができたことで、周囲のそういった空気を感じ取れているんだろうか?


「私ね、宇野くんと両想いになれるように頑張る。だから、一緒に頑張らない?好きな人に好きになってもらえる努力、市原さんと一緒だったら頑張れそうな気がするんだ」

「いろはって、意外と熱血だった?もっとクールで無関心なタイプだと思ったけど全然違う。私、今のいろはの事、好きだわ」


同性に好きだと言われたのは初めてで、そう言ってもらえる自分自身に驚いている。

人と関わる事で、前を向いて進む事で、人は変われる……ううん。それまで眠っていた自分が新しく生まれるのかもしれない。

変われるって考えるより、新たに生まれると思う方がなんだか好きだなって感じる。

私はこれからもどんどん新しい自分を新たに生み出したいと思う。

それは未来を作っていく上で、きっと糧になっていくに違いないから。



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