キミに嘘を吐く日
「おっまえなぁ……、なんでもベラベラ喋んなよ」


照れてるせいだとわかっているけど、怒らせてしまったようだ。


「なによぅ、別にいいでしょ。嬉しい報告でしょ。話したいじゃん」


前に座る高田くんの頭を突きながら、拗ねた声を出す市原さん。

そんな市原さんを一瞬振り返った後、不服そうに高田くんはボソリと言った。


「じゃあ、俺だけかよ。誰にも言わずに2人だけの秘密にしたいって思ってるのは……」


多分高田くんは、市原さんだけに言ったんだろうけど、私にもバッチリ聞こえてしまっているわけで。

そんなの言われた側は悶絶ものだと思うんですけど。

案の定隣では、市原さんが原型を留めなくなりそうな勢いで蕩けている。


「あ、えーと。わ、私前に座るね。茶原さんや森さんとも話たいし……」


言いながら、ゴソゴソと2人の横を通って高田くんと席を代わった。

宇野くんの住む街に着くまで、決して2人の邪魔はすまいと誓った私だった。

2人がうまくいったのは、本当に嬉しいし喜ばしいことだ。

その2人を見ていると、尚更宇野くんに会いたくなった。

高速に乗って途中ドライブスルーに何箇所が寄りながら、宇野くんが住む街についたのは夕方近くだった。

宇野くんの住む街は海のそばにあった。

高速を降りて、公道を走っていると海岸線が見えてきた。

水面が碧く、波が水飛沫をあげると日に当たってキラキラと輝いて見えた。

あの日、宇野くんと見た海の色に少し似ていると感じた。


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