キミに嘘を吐く日

でも、宇野くんの隣にいるのは私でありたかった。


「宇野くん……会いたいよ、」


嗚咽とともに溢れた想いは、宇野くんには届かない。

彼は今ここにはいないのだから。

膝を抱えてぐすぐすと泣いた。顔を上げられないほど涙や鼻水で自分の顔が最悪になっているのが分かる。


「宇野くん、」


いつだって呼べば答えてくれた彼はいない。

何度も何度も彼の名前を呼んで、それに返える声がないことが、寂しくて、苦しくて、気持ちがどんどん落ちて行く。

不意に上着のポケットに入れておいたスマホから、RINEの着信が鳴った。

持っていたタオルで涙を拭いてからRINEを開いた。

『お夕飯、冷めちゃうよ。今どこ?』

茶原さんから届いた内容に、時間を確認すると19:00になっていた。

夕食は個室を18:30に貸し切って取ることになっていた事を思いだした。

『すぐ戻ります』と返して、立ち上がって砂を払った。

ホテルの外灯のおかげで砂浜は明るい。

気付けば何組かいた二人連れの姿もいなくなってた。

待たせてしまっていることが申し訳なくて、急ぐ私の足は、不安定な砂浜に何度も足を取られてしまう。

こけないようにと足元だけを見て進む私は、目の前にできた人影に気付かなかった。

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