キミに嘘を吐く日
「いろはって相変わらずイイコちゃんだな」

「宇野くん?」

「よくそんな風に人のこと信用できるよな」

「どういうこと?」


宇野くんの言葉の意味が分からない。


「俺、いろはのこと騙して、嘘吐いて、逃げるようにいろはから離れたのに。いろはの目の前で、いろはじゃない女子と仲良くして……そんな俺に腹が立たないのかよ」


ここにきてあの日のことを、宇野くんの口からこんな風に聞かされるとは思わなかった。

聞けるわけない。

楽しそうに笑う宇野くんと西条さんを見て私がどんな想いでいたか知らないくせに。

腹は立つよ。たったに決まってる。

でも、それ以上に宇野くんには幸せになって欲しかったから、だから私はあえて触れずにいたのに。


「……エイプリルフールだって、宇野くんが言ったんじゃない。エイプリルフールは嘘を吐かれたからって、その相手を責めたりしないでしょ。騙された方が悪いの、敗けなの」


だからって、私の中に生まれた宇野くんへの恋心を消すことはできなかった。

高田くんから聞いていた宇野くんの私への想いは確かにあったんだと思いたい。

今は西条さんという好きな人ができて、彼女を大事にしている宇野くんが好き。

だから、宇野くんには西条さんを裏切ったり、傷つけたりして欲しくない。

私が好きになった人は、そんな酷い人じゃないって思いたい。


「じゃあ、なんで……?」

「え?」


訴えかけるような、宇野くんの目に引き寄せられる。

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