キミに嘘を吐く日
「いろは、いろは、いろは……」


嗚咽混じりの宇野くんの声が、何度もその名を呼んだ。

いろは。

それは、私の名前でもあり、彼が両親から付けて貰った名前でもあるんだ。


「い、いろはくん……」


彼の名前を呼んだ瞬間、彼の体がビクッと大きく震えた。

ゆっくりと宇野くんを見上げると、そこには涙に濡れた宇野くんのキレイな目が私に向けられていた。

その目が望むものが分かった気がして、私はゆっくり彼の耳元に唇を寄せた。


「いろはくん……大好きだよ。私はあなたのことが好き。今も、これからもずっと……だから、信じて欲しい」

「いろは、俺は……」

「うん。分かってるよ、宇野くんの気持ち。ちゃんと分かってる」


宇野くんは臆病になってただけ。

誰よりも優しくて温かいキミだから、ちゃんと人を愛して大切にできる。

だから、好きになった子を……西条さんをちゃんと信じてあげて欲しい。

逆に宇野くんを抱き締める形でしばらくじっとしていた。

私のバッグの中でスマホが鳴り出すまで。



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